なつい( @kurikei710 )です。
私は当サイト(ReAction)で何度か書いていますが、12年間のお笑い芸人としての活動歴があります。
その12年の間で実は、1年間の引きこもり生活を過ごしています。
引きこもりはインターネットスラング(※)で『自宅警備員』なんて呼ばれ方もしていますが、私は自宅に引きこもり、誰と関ることもなければ働くことにも白旗を上げて完全に引きこもっていました。
引用:インターネットスラング – Wikipedia
インターネットスラングは、文字通りインターネットで使用されるスラング(隠語、略語、俗語)であり、主としてインターネット利用者の間でのみ通用する特殊な言語表現である。
タイトルに記載しているように、私は1年間の引きこもり歴により300万円あった貯金を0円にしています。
ここでは、引きこもりの実体験に基づき下記の内容を掘り下げていきます。
- 引きこもりの体験談を公開する理由
- 引きこもりになってしまった原因
- 引きこもり期間中はどのような生活であったか
- 引きこもりを脱出したきっかけ
体験談を公開する理由について
はじめに、「引きこもり生活」の体験談をどうして公開しようと思ったかを書きます。
理由は、インターネット上に溢れている情報の薄さです。ためしに、Google検索で「引きこもり 原因」と検索をしてください。
検索結果の上位に表示されているのは、NAVERまとめや、「原因はストレスにある!」「改善方法はコミュニケーションを図ることだ!」などが書かれたサイト。
どこのサイトにも同じような内容が書かれています。
検索結果の上位に表示されているこれらの内容が、本当に「引きこもり」から脱出したいと思っている人にとって有益な情報か?と考えたときに、有益と思えなかったので自分の体験談を書こうと思いました。
どれだけの人にこの情報が届くかはわかりませんが、私の体験談をもとに“こんな人もいるんだ”と引き出しのひとつとしてもらえると嬉しいです。
そのため、ここでは他の記事のように「原因は○○です」「脱出するために○○をしてください」とは書きません。あくまで私の体験談としてお読みください。
引きこもりの原因
冒頭でもあったように、私は12年間お笑い芸人として活動をしていました。引きこもりとなったのは、お笑いコンビでキャリアをスタートさせて6年目のとき。
もろもろの事情がありコンビを解散した直後に、下記記載の原因で引きこもりとなり1年間、脱出できずにいました。
人と関わるのがとにかくめんどくさい
コンビを解散するまでの間は、事務所のマネージャーがオーディションや仕事を振ってくるのを待っていられないぞと、自分達で動きに動きまくりました。
テレビ局や制作会社に「ネタ番組のオーディションはありませんか?」と連絡をしたり、広告代理店へ飛び込みでイベントの企画書を持ち込んだり、学園祭に出演するために年下の大学生に頭を下げて実行委員会を紹介してもらったり。
とにかく日によって色んな人と会ってコミュニケーションを取っていました。
コミュニケーションを取ることに苦痛やストレスを感じることはなかったですが、コンビを解散した途端、「人と関わるのがめんどくさい」「誰とも話したくない」と急に感じてしまったのです。
この「めんどくさい」が、引きこもり生活の原因のひとつとなりました。
1年間、すべての連絡をシャットアウト
とにかく人と関わることがめんどくさくて仕方がない!世の中にいるすべての人間に対してこのような感覚となりました。
芸人仲間や実家の友達からはもちろん、親からの連絡も全てシャットアウト。さすがに親へは「かなり忙しいから、連絡しばらくせんといてー!元気にやってるから」と1通だけメールを入れましたが、それ以降は引きこもりを脱出するまで一切連絡をしませんでした。
将来を考えるのがめんどくさい
お笑い活動中は、当然売れることを目標に動いていました。そのため、考えることは「売れるためには何をどうすればいいのかな?」「番組に出るためにはどうすればいいのだろう?」といったことばかりでした。
それが、解散。
解散をしたことにより、考える内容は「ここで区切りをつけて就職をした方がいいのかな?」「いや、諦めるのはまだ早い」「1人でお笑い活動続けるならどうする?」「誰かを見つけて新しいコンビで活動をする?」
このようになりました。
とはいえ、「人と関わるのがめんどい」が思考にブレーキをかけます。”人と関わること+将来を考えること”のダブルめんどくさいが、引きこもり生活の大きな原因となりました。
やる気が出ない
人と関わることも何かを考えることもめんどくさい。つまり物事に対しての「やる気」が自分から完全に削がれてしまっている状態です。何もやる気がないので、引きこもってしまって当然だと言えます。
「楽なバイト」検索で見つけた仕事の面接も無言で辞退
引きこもり生活に入るまでに高額時給のアルバイトや、事務所のマネージャーに任せず自分たちで代理店などへ営業をかけ仕事をしていたこともあり、貯金は300万円まで貯まっていました。(当時の年齢26歳くらい)
お金に余裕はありましたが、貯金は崩したくなかったため、とりあえずバイトだけはしようと決意。
ネットで「楽なバイト」と検索をして、夜中出勤で発売前のゲームをプレイしてバグを探す!という求人を発見。
応募をして面接日が決まるも、やる気が削がれてしまっているため、履歴書を用意するのもめんどくさい、面接に行って人と話をするのもめんどくさい!と感じ、面接当日になってもキャンセルの連絡を入れることもなく辞退しました。
ここから貯金300万円を1年間かけて崩し続け、0円まで使い切ることに。
引きこもり期間中の生活はこんなだった
「楽なバイト」の面接にすら、やる気が完全に削がれて行けなかった自分。1年間の引きこもり期間、300万円の貯金を切り崩してどのような生活を過ごしていたのでしょうか。
1日中お笑いのDVDを見る
コンビを解散するまでの間は、月に15本くらいのライブ出演、そしてローカルラジオやレポーターなどもやっていました。解散をしてから完全にやる気はなくなったけど、お笑いが好きという気持ちは変わっていませんでした。
引きこもり期間中は毎日、お笑いのDVDを見尽くしました。1日12時間以上は見ていたと思います。これを1年続けていたので、今考えると凄いですね。
見ていたDVDの作品名をざっと挙げると、
- チハラトーク(出演:千原兄弟)
- にけつ(出演:千原ジュニア、ケンドーコバヤシ)
- NETAJIN(出演:陣内智則)
- とろサーモン単独ライブ(出演:とろサーモン)
など。1回見たら終わりではなく、同じDVDを20回以上は見ています。
そしてこれらのDVDはもちろん、TUTAYAでレンタルをすることもありましたが、ほとんどは購入しています。
にけつのDVDは20本以上、チハラトークのDVDも15本近く発売されているので1本3,000円と見積もってもすごい額ですよね。
300万円の貯金がかなり早いペースで消えていくわけです。
1歩も家から出ない日が週に5日
1日がお笑いDVDの鑑賞と、睡眠・食事だけで終わりを告げます。こんな生活を1年間続けるわけですが、週に5日は1歩も家を出ませんでした。
そして残りの2日で引きこもるための食料をスーパーへ大量に買い込みに行くわけです。時間にして30分くらい。
あとは引きこもりとはいえ、なぜか体型の崩れを気にしていたため、週に2日はトレーニングジムで2時間ほど、筋トレや有酸素運動を行っていました。
こんな生活が1年間です。
日本語を忘れてしまわないかとたまに不安になる
前述したように、週に5日は1歩も外へ出ない生活。残りの2日で外へ出ているとはいうものの、人と話す場面がありません。コンビニで店員さんに「お弁当は温めますか?」と聞かれてもうなずくだけ。
美容室へ伸びた髪を切りに行ったときも、「カット」とだけ告げて寝たふりを決め込みます。
「仕上がりました」と声をかけられ、残念な仕上がりになっていたとしても、人と会わないためどうでも良し。やはり美容室でも話をすることがないわけです。
これだけ会話をしない日が続くことで、日本語を忘れてしまわないかという不安に押し潰されそうになったことが。そんなときは、家の中で「あー、あー」と発生練習をして解消をしていました。
昼夜逆転の生活
引きこもり生活をしている間は、昼夜逆転していました。社会人が明日の出勤にむけて眠りについた時間帯にお笑いのDVDを見て、社会人が仕事をしている時間帯に熟睡。
心のどこかで「この生活はダメだ」とかすかに思っていながらも、1年間引きこもりは続きました。
ここまでで何度も書いたように、「やる気がない」「やる気が出ない」んだもん。仕方がないねと自分の引きこもり生活を正当化して過ごしていました。
引きこもり脱出のきっかけ
バイトすらせず、1本およそ3,000円のDVDを何十本も買い込んだりしていたので、1年近く引きこもりを続けたころには、300万円あった貯金の残高が何十円までになっていました。
預金機では引き落とし手続きができない金額であったため、実質0円です。
そして、この貯金を崩しきったところで引きこもりを脱出するきっかけとなった瞬間が訪れました。
引きこもり生活にもう飽きたわ
が脳内に流れました。そして苦労をして積み立てた300万円が、通帳をみると数十円に。たった1年で溶けてしまった貯金額に、目が覚めたのです。
「もう飽きた」と感じてからは外に出る時間が増え、これまでシャットアウトしていた連絡にも返信をするようになりました。
それからはコンビを解散したときの元相方が立ち上げた株式会社で、取締役として働きながら、芸人仲間をたどって新しくコンビを組み、お笑い活動を再開したのです。
このようにして、1年間に及ぶ引きこもり生活を脱出することができました。
おわりに
私が1年間、引きこもり生活をした体験談を書かせてもらいました。人によっては、「働きもしないで引きこもり?」「信じられない」と言われたことがありました。
でも、自分は1年間の引きこもり生活がマイナスだとは思っていません。むしろ、4,380時間(12時間×365日)お笑いのDVDを見ることに没頭して引き出しが増え、貴重な体験談ができました。
引きこもりの原因も脱出のきっかけも、ふとした瞬間に訪れました。引きこもりは、「○○が原因」「○○で克服できる」とは言い切ることができません。人それぞれで思考や感情、環境が違うから。
なので、具体的な解決策を提案することはできませんが、今回の体験談が引きこもりで悩む方にとって、何かのきっかけになれれば嬉しいなと思います。